第4回 ファンタジーは細部に宿るのか?
ファンタジーは自分にとって主戦場だとは思っていないし、得意分野でもないけれど、昔から憧れに似たものを持っている。
だからだろうか、昔ある童話作家から聞いた話や、他のファンタジー作家の文章を読んで、ずっと信じてきたことがある。
もしかしたら、ファンタジーを書く人にとっては基本なのかもしれない。
それはファンタジーを書くのなら、細部にこだわれ、というもの。
もう少しくわしく書けば、ファンタジーはリアリズムより、細部にこだわらなければならない。それだけファンタジーでは細部が重さを持つ、ということだ。
ハイ・ファンタジーであれば、テーブルからお皿が落ちて割れるシーンを書くことで、その世界の方式が一つ決まると思っていい。その世界では、テーブルからお皿が落ちて割れるのか、それともなんらかの法則が働いて割れないのか。読者はワンシーンでそのことを知る。
もう少し突っ込んでいえば、お皿は落ちても割れないかもしれない。その世界では、争いが多く、食器は割れやすい陶器を使っていないかもしれない。
たった一つの他愛のない情報でも、それは読者にとって、作者の作り上げた世界を知る、数少ない情報の一つでもある。なにげなく書いた一文で、世界の法則が決まる。それがファンタジーの難しさなのだと思う。
2006-12-04 21:04
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